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『受賞童話作品』とダイジェストガイドをどうぞ。 [童話]

(ごあいさつ)いろいろな賞をいただいた童話を、まとめてご紹介する、ダイジェスト・ガイドを作りました。クリックしていただければ各話に入れるようにしてありますので、ご自由にお楽しみください。ただいま少々多忙のため、なかなか新作に手がつけられませんが、できるだけ早く新しい作品を発表したいと考えております。( イメージ写真は、昨年、井の頭公園で出会った赤ちゃんのスナップを使わせていただきました。可愛いでしょ!)

4/27 近況報告) 近いうち、15 才のイラストレーターSASUKE さんと組んだ新しいコラボ作品を発表する予定です。SASUKEさんは愛媛、私は東京と、互いに遠距離の上、彼女は高校に通いながらの共同制作ですので、まだ少し時間がかかるとは思いますが、ご期待に沿える面白い作品を創るようがんばっている最中です。

(その他の記事もいろいろあります。下記にリンクを貼ってありますのでクリックしてお入りください)

 ★(NEW!)最新記事とダイジェストガイドをどうぞ。

   ※これまでの公開記事のダイジェストガイドです。目次としてご覧ください。

 『写真+詩で季節を詩う』(ダイジェストガイド ①~21)

( では、童話作品をどうぞ。)

 『北のカリヨン』エピソードが次々に転がっていくロードムービー童話

(第11回 家の光童話賞 佳作)童話

 原稿用紙10 枚程度の童話ですが、ちょっと変わった仕掛けがしてあります。

 女の子が拾った小さな金色のベルが次々に人の手に渡り、各地を転々としながら、ベルを手に

 する人々と、短いエピソードが生まれる。そのエピソードがまた次のエピソードに繋がってゆく、

 いわばロードムービー童話です。

 

『あっちゃん バイバイ』5才で天国に行った小さな女の子のお話

(ほたる出版 第一回ほたる賞受賞)→童話

 これも原稿用紙10 枚の童話。

 筆者が子どものころ実際にあった話がずっと心に残り、それを童話という形に仕立てたもの。

 5歳で死んだあっちゃんと、それを取り巻く子どもたちとの、ひと夏の物語。

 しみじみとしたストーリーです。

 

『父さんの フェニックス』男の子とお父さんの切ない約束の物語

(第二回「言葉の町お話コンクール」三重町民賞受賞)→童話

 原稿用紙10枚の童話。これも筆者が子どものころ、周辺に居たある少年の実話を素に、童話と

 いう形に仕立てたもの。父親の事故を超えて急激に成長したクラスメートへの感動が、この作品

 を創らせたと思っています。

 

『雪の日の リリィ』)→最後まで結末が見破れない推理ファンタジー

(第七回「ゆきのまち幻想文学賞」 佳作→童話

 原稿用紙10 枚。これは小さな推理仕立てのファンタジー小説です。

 ストーリー通り読んでいただければ、多分最後まで、仕掛けのタネは見破れないはず。

 他にも、原稿用紙100枚程度の、中篇の児童向けファンタジー小説の受賞作があるのですが、

 横書きのブログで読むにはいささか無理がある、と判断したので掲載は見送ります。

 どうしても読みたい、と云う方は、コメントで脅迫を。私は脅しには弱いので(笑)

(追伸)4月14日に、高校一年生のイラストレーター「sasukeさん」のイラストが、挿絵として追加されましたので、いっそう楽しくなりました。お楽しみください。

 

『おじいちゃんの ヤリナオシ・カプセル』 →笑ってほろり、の爆笑SF童話

(教育総研「創作ファンタジー・創作童話大賞」創作童話部門 佳作)→童話

  これは少し長め、原稿用紙で20 枚の小学生向け童話です。でも、大人が読んでも楽しい” 笑えるSF童話 ”だという嬉しい、コメントをいただいてます。むかし子どもだったあなた、ぜひ一度読んでみてください。なかなか悪くない気分になれると思いますよ。いや、ほんとは、小さい子どもたちに、声を出して読み聞かせしてもらえると、作者としては嬉しいんですけどね。

 

(その他の記事はこちら。リンクを貼ってありますのでクリックしてお入りください)

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男の子とお父さんの切ない約束の物語『父さんのフェニックス』 [童話]

                      

          『父さんの フェニックス』

 父さんは眠っている。もう、五年も眠っている。病院の白い、かたいベッドの上で、子どもみたいに、すやすや、眠っている。

 父さんのことを、ぼくはよく知らない。とても働き者で、がんばり屋で、男らしい、いい人だったんだよって母さんは言うけど、父さんが起きていたころ、ぼくはまだ幼稚園の年長組だったし、毎日、父さんとすれ違ってばかりいたから、よくわからない。

 朝起きると、父さんは、もう家を出ていた。夜は、ぼくが眠ったころ帰ってきた。日曜日は、お昼近くまで寝坊していたし、その後は本を読んだり、テレビを見たり、昼寝したり。家の中で一日中ゴロゴロしていることが多かった。だからぼくは、父さんに遊んでもらった記憶があんまりない。ただ、覚えてないだけのことかもしれないけど。

 父さんは、今日も眠っている。ビニールの管を鼻の穴に入れて、注射針を右の腕に刺して。黄色い薬が、大きなガラスびんからポタリ、ポタリ、と落ちる。薬は、透き通ったビニール管をつたって、父さんの右腕の中に入ってゆく。僕は、ギイギイ鳴る、スチールパイプの椅子にすわって、それを、じいっと見つめている。

 父さんが " じこ " にあったのは、ぼくが一年生になった日の朝だった。僕の入学式を見るために、仕事をほんの少し抜け出そうとして、建築現場の高い足場から落ちたんだ。

 母さんは、それを聞くとすぐに、ぼくをつれて、病院にかけつけた。だからぼくは、入学式をしていない。

 ぼくは学校が終わると、たいていまっすぐ病院に行く。一年生のときから、ずうっと続いている、ぼくの日課だ。

 三年生ごろからは、ときどき近所のユウジくんやアツオくんと遊ぶこともあるけど、それでも、夕方までには病院に行く。父さんと話をするために。

 ぼくは父さんに話す。今日あったいろんなできごとを。父さんは何も言わず、ぼくの話を聞いているだけだけど、それでもかまわず、ぼくは話す。テストも見せる。成績表も、ちゃんと見せる。

 父さんは黙っている。でもぼくは知っている。父さんには、ちゃんと聞こえているってことを。だって、母さんがそう言ったもの。

「お父さんはね、しゃべれないけど、ちゃんと聞こえているのよ。お医者さまが、耳は何ともありませんよって、言ってたもの。

 頭の中をケガしちゃったから、起きられないし、目も開けられないけど、それでもちゃんと生きてるわ。お父さんが、いつか目を覚ましたとき、マモルのことやお母さんのこと、なんにもわからなくなってるなんて、かわいそうじゃない。お父さんには聞こえてる。ちゃんと聞いてるわよ、ぜったい」

 ぼくも、そう思うから。

 きのう「父の日」の宿題が出た。ぼくはちょっと困った。だって『お父さんのことを、作文に書いてきてください』っていうんだもの。

 ぼくは一生けんめい考えた。そしたら、ひとつだけ思い出したんだ。小学校に入るちょっと前、父さんと近所の川へ " つり " をしに行ったときのことを。

「うーむ、釣れんなあ。今日は魚のヤツも日曜日をきめこんでるかな」

 父さんはすっかり退屈して、草の上にゴロリと横になった。タバコを取り出し、空にぷうっと、白いケムリをはきながらぼくに聞いた。

「マモルは、大きくなったら、なんになりたいんだ ? 」

「えーっと、よくわかんない」

「なんだ、なんかないのか。たとえば新幹線の運転士さんとか、おまわりさんとか、総理大臣とか、飛行機の設計士とかさ」

「ヒコーキのセッケイシ ? 」

 ぼくがきょとんとして聞いたら、父さんはきゅうに大声で笑いだした。

「父さん、むかし、なりたかったんだ」

「へえ、どうしてならなかったの ? 」

「う~ん、学生時代、ちょっとなまけちまったからかな」

「なまけなかったら、なれたの」

「そうだな、なれたかもしれんなぁ」

 父さんは空を見上げて、まぶしそうに目を細めた。青い空の真ん中には、白く、細い尾をひいた飛行機雲が浮かんでいた。

その日は、とてもいい天気だった。

 

                     ( photo by baldhead ) 

「むかし、古い映画を見たんだ。タイトルは、ええと、たしか『飛べ フェニックス』だったな。うん、たしかそうだった」

「どんな映画だったの ? 」

「砂漠の真ん中に、小さなプロペラ飛行機が不時着するんだ。5人、いや6人だったかな、人を乗せて」

「だれも死ななかったの ? 」

「死ななかったさ。だけど水も食べ物もない砂漠の真ん中だろ、みんな困ってな、なんとかして脱出しようとするんだけど、うまくいかない。すると、いちばん若い男がこう言うんだ、この、こわれた飛行機を修理して、もう一度飛べるようにしよう、ってな」

「その人がヒコーキのセッケイシだったんだ ! 」

「いいや、そいつは模型飛行機をつくってるやつだったんだ」

「模型飛行機って、プラモデルの ? 」

「うんまあ、むかしはプラモデルなんてなかったから‥‥そうだ、ラジコン飛行機だよ、ほら、無線操縦で飛ぶやつ」

「へーえ」

「そしたらみんなガッカリしてな、いくらなんでも模型飛行機つくってるやつに、本物の飛行機が直せるはずがないってな。だけどほかに方法もないから、結局そいつのいうとおりに、みんなで協力しあうんだ」

「それで、どうなったの ! 」

「飛んだのさ、ヨタヨタと、だったけどね」

「うわぁ、すごい ! 」 

「つぎはぎだらけのオンボロ飛行機が、広い広い砂漠の上を、5人の命を乗せて飛んでゆく。父さんうれしくて、うれしくて、涙がボロボロこぼれたよ」

 

「だから飛行機の設計士かあ ! 」

「まあ、ビルの設計をするのも、飛行機の設計をするのも、似たようなもんだけどな」

「ちがうよォ、ビルと飛行機じゃあ、ぜんぜんちがうじゃないかァ」

「そうか、ちがうか。アーッ、ハッ、ハッ、ハッ」

 ぼくは、そのときの父さんとの話を作文に書いた。フェニックスというのは、エジプトの神話に出てくる不死鳥で、火の中から何度も生き返る死なない鳥のことだということを、先生が教えてくれた。

 ぼくの作文は、父の日の作文コンクールの2位に入賞した。ぼくは、病院にとんでいった。

 大きな額縁に入った賞状と、オルゴールの鳴る賞品の時計とを、父さんのまくら元にそっと置く。父さんは、いつものようにすうすう寝息をたてて、やっぱり眠っている。ぼくはかまわず、大きく息を吸い込んで、いつもより大きな声で、父の日の作文を読みはじめた。

『‥‥‥‥‥父さんは大ごえでわらったあと、ちょっとまじめなかおで、ぼくにいいました。

「おまえ、ほんもののひこうきをつくってみたくないか ? 」

「つくりたいっ ! 」

ぼくのへんじがあんまりはやくて、あんまり大きなこえだったので、お父さんはびっくりし、でも、とてもうれしそうに、「そうか、うん、そうか、やっぱりおまえはおれのむすこだ。うん、そうかそうか」と、うれしそうになんどもうなずき、ぼくのあたまをなんども、なんども、なでてくれました。

 その日、さかなはとうとういっぴきもつれなかったけれど、お父さんもぼくも、なんだかとてもまんぞくして、いえにかえりました。母さんは、ぼくらのカラッポのビクをのぞきこんで、「まる一日かけて、あなたたちなにやってたのよ」と、ケラケラわらいました。でも、お父さんはぼくに、大きくりょうてをひろげてみせ、ぼくにはそれがひこうきだということが、すぐにわかり、それがとてもうれしかったのをおぼえています。

 それからしばらくして、ぼくはこの日のことを、すっかりわすれてしまいました。ぼくがとても小さかったからだとおもいます。でも、父の日のさくぶんをかこうとおもったとき、ぼくはとつぜん、この日のことをおもいだしました。だからぼくは、ためていたおこづかいで 『とべ、フェニックス』のビデオを、かりにいきました。

  えいがは、お父さんのいったとおりでした。ガタガタのおんぼろひこうきが、ひろいサバクのうえを、いっしょうけんめい、とんでゆきます。それをみたとき、ぼくも、お父さんとおんなじように、なみだがボロボロこぼれて、とまりませんでした。

 父さん、あのときぼくに「おまえ、なんになりたい」ってきいたよね。「ひこうき、つくってみたくないか」って、きいたよね。

 ぼく、なるよ。なまけないで、うんとべんきょうして、ひこうきのせっけいしに、きっとなる。そして、はじめてつくったひこうきに『フェニックス』ってなまえをつけて、父さんをのせて、サバクの上をとぶんだ。父さん、そのときまで、げんきで、がんばっててください』

 ぼくが作文を読み終えたとき、父さんがニヤリ、と笑ったような気がした。病室の外は、いつのまにか、きれいな夕焼け空に変わっていた。

                              (photo by baldhead)            

 父さんは、目を覚まさないまま、ぼくの卒業式の翌日に逝ってしまった。ぼくは小さな模型飛行機を、こっそり父さんの棺に入れた。父さんは、その飛行機に乗って、遠い空に、飛んでいってしまった。

 父さんと、僕との約束は、これからだ。

                               (photo by baldhead)

 

 (あとがき)

 3つめの贈り物です。これも童話賞をいただいた旧作ですが、皆さんのご意見をお伺いしたくて、ブログに公開させていただきました。何かご意見がいただけたらと、楽しみにしております。

 4つめの贈り物は、お話にちょっと不思議な仕掛けをしてありまして、まあ、推理童話とでも思ってください。お話の結末がどうなるか、それを楽しんで読んでいただければ、と思っています。

 では、4つめの贈り物の終わりに、またお会いしましょう。

 

 

  


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ロードムービー童話 『北の カリヨン』 [童話]

               『北のカリヨン』

北国の村を、大きな貨物自動車が走りぬけました。自動車が行ったあとに、小さな金いろのベルが落ちています。お父さんといっしょに歩いていた、幼い女の子がそれをみつけ、頭につけていた赤いリボンを、そっと結びました。女の子のお父さんは、これから遠くの町に、働きに行くのです。女の子は、リボンのついたベルをお父さんにわたし、こう言いました。「あたしのこと、忘れないでね」

               

お父さんは、毎日の仕事が終わるとベルを取り出し、北国の村で待っている女の子のことを思い出します。ベルはリンリンと、忘れな草のような音をたてて、つかれたお父さんをなぐさめてくれました。

下宿やの男の子は、美しいその音色を聞いて、ベルがほしくなりました。そしてある日、お父さんが出かけたすきに、こっそりベルをぬすみ出し、かくしてしまったのです。

ベルをなくしたお父さんは、女の子に会えなくったようで、さみしくてたまりません。でも、男の子も、がっかりです。ぬすんだベルは、どうどうと聞くことなど、できませんから。

しばらくするとお父さんは、働きすぎて体をこわしてしまいました。来たときとおなじに、小さな荷物をもって、村に帰って行きます。男の子は大よろこびです。「これでやっと、あのベルの音が聞けるぞ」けれど、くらい、しめった場所にかくされていたベルには、うっすらとサビがうき、もうあの澄んだ音色では、鳴ってくれません。男の子はおこって、下宿やのまどから、ベルをなげすててしまいました。

町を歩いていた一人ぐらしのおじいさんは、道ばたで、なにか、キラリと光るものをみつけました。ひろいあげてみると、うすくサビのういた、小さな金いろのベルです。おじいさんは家にもってかえって、ていねいにサビをおとし、ベッドのまくらもとに、つるしてみました。するとベルは、またリンリンと、澄んだ音色をたてはじめたのです。

そのばん、おじいさんは、ふしぎなゆめをみました。いつのまにか、すっかりわかくなって、であったころのようにかわいいおばあさんと、町はずれの森の小道をさんぽしている夢です。もうとっくにしんでしまったはずの仲間たちも、ニコニコいっしょにあるいています。うれしくてとびおきると、あのベルが、まくらもとで、かすかに鳴っていました。おじいさんは、遠くの村に住んでいるまご娘のことを、ふっと思い出し、このベルの音を、ぜひとも聞かせてやりたくなったのです。さっそくベルをきれいなはこに入れ、郵便局にもっていきました。

若い郵便やさんが、夏のあつい道路を、自転車で走っています。一日中走りまわって、すっかりくたくたです。するとどこからか、リンリンと、すずしい音が、聞こえてきました。音は、肩からさげた郵便ぶくろの中から、聞こえてきます。郵便やさんは、土手にこしをおろし、その音に、じっと耳をかたむけました。すると、ずっとむかし、この町を出ていった、なつかしい女友だちのことを思い出したのです。「そうだ、こんや、あの子に手紙をかこう」 郵便やさんは、自転車にとびのり、もういちど元気よく走りだしました。

北国のとなり村にすんでいるおじいさんのまご娘は、小包みからでてきたきれいなベルを見て、大よろこびです。まご娘には、とても仲のいい、お友だちがいます。けれどその友だちのお父さんはいま、とてもおもい病気にかかっているのです。しずんでいるその子に、このすてきなベルをプレゼントしたら、きっと元気をだしてくれるにちがいありません。

女の子は、となり村の友だちからとどいたおくりものを見て、びっくりしました。いそいで、お父さんのところに走っていきます。「お父さん、ほら見て、あのベルよ、あたしたちのところにかえってきたのよ」 ベルには、すこしくたびれた、あのときの赤いリボンが、まだついたままでした

きょう、丘の上の教会に、カリヨンがやってきます。カリヨンは、たくさんのベルをくみあわせた音楽塔です。病気のなおったお父さんは、すこし大きくなった女の子の手をひいて、ゆっくりと丘をのぼってゆきました。この小さなベルを、カリヨンの仲間に入れてあげるために。

北国の村の丘の上から、すてきなカリヨンの音色がひびいてきます。 きょうは女の子のけっこんしきです。とても元気になったお父さんに手をひかれて、とても大きくなった女の子が、真っ白なドレスに身をつつんで、丘をのぼってゆきます。あたりにひびくカリヨンの音色に、女の子が、ふとかおをあげました。じっと耳をすませ、なにかを思い出そうとしています。「なんだか、とってもなつかしい音‥‥」 お父さんも、じっと耳をかたむけます。でもそれは、ほんのわずかなできごとで、二人はまた、なにもなかったみたいに、丘をのぼりはじめました。ずっとむかし、二人のしあわせをまもってくれた、あの小さな金いろのベルが待つ教会をめざして。

 

 

 

 

 


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5才で天国に行った小さな女の子のお話。 [童話]

            『あっちゃん バイバイ』

 あっちゃんはね、お兄ちゃんの友だちの、ヨシオくんの妹。あっちゃんは五つ。あっちゃんは 今よりもっと小さいとき、中耳炎にかかって、少し耳が遠くなった。だからあっちゃんは 遠くから名前を呼んでも、知らんぷり。けど、うんと近くで「あっちゃーん」て呼んだら、ニコニコふりむいてね、首をかしげて「う~」とうなる。それがなんか、すごくかわいいんだよ。

 週間新潮表紙絵谷内六郎さんの絵です

 ぼくが一年生になったときの夏、五年生のお兄ちゃんとヨシオくんと、ぼくとぼくの同級生たちとで、川へ遊びにいくことになった。
「水泳パンツをはいて、タオルを持って、ボーシは忘れずかぶってくる」

 大きな声でお兄ちゃんが命令する。ぼくは、みんなのリーダーをやってる、カッコいいお兄ちゃんが、すごく自慢だった。

 神社の前のタコ焼きばあちゃんの屋台の前に集まることになって、ぼくは、学校が終わると同時に、家にすっとんで帰った。

 約束どおり、ばあちゃんの屋台の前にみんな集まったのに、ヨシオくんだけがこない。さきに行こうよってみんなさわいだけど、「もう少し待つ ! 」というお兄ちゃんのひと声で、全員おとなしく石段にすわりこんだ。風はないし、お陽さまはじりじりあついし、背中を汗がたらたら流れるし、いくら待ってもヨシオくんはこないしで、いいかげん嫌になったとき、 お兄ちゃんがとつぜん飛びあがった。

「おーい、山田ァ、こっちだ、こっち」

 ヨシオくんが、ひたいにいっぱいあせをかいて、走ってきて、「ごめん、ごめん」と、みんなにあやまった。そんなヨシオくんのズボンのかげから、「う~」と、あっちゃんがかおをのぞかせた。

「やっぱり、そうやったがか」

「うん、あんまり泣くき、ほうってこれんかった。お母も、つれていちゃりゆうし」

「かまん、かまん。一年ボウズの中で、遊ばせちゃろ」

「すまんねや、ジャマもんがふえて」

「なにが。みんなぁで、ちょっと気をつけちゃりゃあ、すむことやか」

 ヨシオくんは、ほっとしたかおをした。あっちゃんは、ニコニコ、う~といった。お兄ちゃんが、さっさと歩きだした。

 ちんか橋をわたって、草だらけの土手をすべりおりると、小石の川原がひろがっている。みんなの服やタオルを、そこにひとまとめにおくと、お兄ちゃんがいった。

「ええか、あそこの大石からむこうへは、ぜったいにいくな。うんと深うて、背のたたんところがあるき。それから、水につかりっぱなしもいかん。冷えてハラこわす」

 ぼくも、みんなも、しんけんにうなずいた。

「ときどき見にくるけんど、おれらぁがおらんときは、大きいもんが下を見んといかん。あっちゃんは、お前らぁが、ちゃんとめんどうみる。いじめるやつがおったら、ゆうてこい。おれとヨシオは、橋の下で魚を取りゆうき。すんぐに、助けにくる。わかったねや」

 ぼくらは、ぜんいん、しっかりとうなずいた。

 お兄ちゃんとヨシオくんは、水中めがねと竹のヤスと、魚アミと箱ビンをかかえ、なにかしゃべりながら、ゆっくりと歩きだした。

「おまえの兄ちゃん、すごいねや」

「なにが ? 」

 ぼくは、わかってたけど、とぼけた。

「なんでも知っちゅうし、こまい子にはやさしい。映画のオヤブンみたいや」

 思わずかおがニヤニヤしてくる。ヒロくんが、つぎになんていうか、わかってるから。

「あんな兄ちゃん、おったらええねや」

 ヒロくんは、ひとりっ子なんだ。

「ああいう兄ちゃんならええけんど‥‥」

 こんどはコウジがぽつんとつぶやいた。コウジの兄ちゃんのコウタは、学校でも有名な暴れん坊だ。そのせいで、おとなしいコウジは、まわりの子から、しょっ中いじめられている。

「父ちゃんとわかれて、母ちゃんがいなくなってから、兄ちゃん変わってしもうた」

 ぼくにはわからない。母ちゃんがいなくなるって、どういうことなんだろ。だけど、しょんぼりうつむいているコウジに、たぶん、そんなこと、きいちゃいけないんだろうな。

「心配すな。コウジには、おれらぁがついちょる。友だちじゃき」

 そういうのが、せいいっぱいだった。するとうつむいてたコウジがかおをあげ、半べそのまま、ニヤリとわらった。ぼくも、なんとなくニヤリ、とわらいかえした。

 そのとき、だれかが、水泳パンツをグイッとひっぱった。あっちゃんだ。汗だらけのかおで、う~う、と川をゆびさしている。

「あ、ごめん。いこいこ」

 ぼくらはそろって、川にとびこんだ。

 あっちゃんは、はじめちょっとこわがってたけど、すぐなれて、おなかのところまで水に入って、大よろこびだ。すべって、ころんで、頭まで水につかっても、泣かなかった。ヒロくんが、りょう手をもってやったら、バタ足もした。

「だいじょうぶか ? 」

 ときどきヨシオくんが見にくる。

 あっちゃんは、その日よくしゃべった。いつものう~のほかに、あ~とか、お~ぅとか、ぎぎぃとか、いろんな言い方をして、はしゃいでる。

「あっちゃん、カッパみたいや。そんなに川遊び、すきがかぁ」

「あ~う、ぎぃぃぃ」

 むじゃきにはしゃぐあっちゃんを見て、ヨシオくんがつぶやいた。「こんなによろこぶがやったら、もっと早うにつれてきちゃるがやった」

 あっちゃん、子どもどうしで川にきたのは、これがはじめてなんだって。

 それからおにいちゃんがきて、いっぱい取ったメダカを、ビニールぶくろに入れて、みんなにわけてくれた。

「ほら、あっちゃんは女の子やき、とくべつ大サービスや。これ見ぃ、ヒメダカやぜ。赤のメダカなんか、めったにおらんぞぉ」

 あっちゃんは、ビニールぶくろの中をおよぎまわる、3びきの赤いメダカに、目をかがやかせた。お日さまにかざしては、なんども、なんども、のぞきこんでる。

 それからぼくらは、肩がやけてヒリヒリするほど遊んだ。夕方ちかくなって、かえりじたくをしていたら、頭のうえから、いきなり小石がバラバラおちてきた。おどろいて見上げると、土手の上にコウジの兄ちゃんが、うで組みで立っていた !

「なんじゃおまえら、赤んぼつれて水遊びか、まっことヒマじゃねや」

 コウジの兄ちゃんのコウタは、お兄ちゃんとヨシオくんの同級生だ。まっ黒に日やけして、背もお兄ちゃんより高い。ガッチリしてる。まゆがふとくて、眼ん玉をぎょろりとむくと、めちゃめちゃこわい。

 いつもひとりでぶらぶらしてて、友だちや下級生を見かけると、すごんだり、おどしたり。ときどき気まぐれに、小さい子をポカリとやるから、みんなにきらわれて、それでますます友だちがいなくなり、ますますいじわるになっていた。

 ぼくらはこわくて、お兄ちゃんたちのうしろにかくれた。だけどそんなぼくらのうしろから、あっちゃんが、いきなりとことこ出ていった。

「なーんじゃあ、おまえ ! 」

  コウタが、れいの眼で、思いっきりあっちゃんをにらみつける。だけどあっちゃんはまるでへいき。コウタの目の前に、ヒメダカの入ったビニールぶくろをつきだして、うれしそうにこうさけんだ。

「おあ、こえ、い~え~あ~ぁ、あょ」

 ぼくはハッとなった。きょう一日あっちゃんと遊んで、あっちゃん語が少しわかるようになっていたぼくは、あっちゃんが、ほら、これ、ヒメダカだよって、コウタに言ってるのがわかったんだ。

 それに、あっちゃんがコウタを、なんでこわがってないかもわかった。あっちゃんの眼には、コウタが、ヒメダカをくれたやさしいお兄ちゃんとおんなじに見えてるんだ、まるきりちがうのに !

 コウタは、じぶんをちっともこわがらないあっちゃんを、ちょっと、ふしぎな生き物でも見るみたいに見つめた。そうして、とめるヒマもなく、いつも小さい子にやるように、あっちゃんの頭をいきなりポカリ ! となぐった !

 あっちゃんの手から、ビニールぶくろがふっとび、水といっしょに、たった3びきしかいないヒメダカが、あたりにとびちった。それを見たしゅんかん、ぼくの頭の中はまっ白になり、コウタの胸ぐらにとびかかっていった。

 ブッとばされるぼくを見て、お兄ちゃんがコウタにつかみかかったのと、ヨシオくんが、コウタにむしゃぶりついたのが、いっしょだった‥‥ような気がする。

 とにかくそれからめちゃくちゃになり、かえり道は、もうだれも口を開かなかった。

 お兄ちゃんもヨシオくんも、眼のまわりがまっ黒になり、ぼくらも大きなこぶがあちこちできて、せっかく取った魚たちはぜんぶ道にとびだして、死んでしまった。そしてぜんいんで戦ったのに、ケンカはやっぱり、コウタにこてんぱんにまけてしまった。

 それから一週間たって、あっちゃんは国道で、車にはねられた。

 ヒメダカを取りに、ひとりで国道をわたろうとしたんだよと、駄菓子やのおばちゃんが、前掛けで涙をふいていた。

 あっちゃんのおそうしきには、近所中のおとなと子どもたちがあつまった。さいだんには山もりの花と、おかしと、おもちゃと、それから、あっちゃんがかいた、たくさんのヒメダカの絵が、かざってあった。

 火そうばにいく時間がきたとき、すごいいきおいで、だれかが走りこんできた。よれよれのシャツにドロだらけのズボン、かおも体もあせまみれの、コウタだった。コウタは、みんながびっくりして見ている中を、まっすぐさいだんの前にいった。そして、手にさげていた大きなビニールぶくろを、ニコニコわらっているあっちゃんのしゃしんの前に、そっとおいた。それを見たあっちゃんのお母さんが、いきなり大声で泣きだした。

 ビニールぶくろの中には、赤いヒメダカが、いっぱい、およいでいた。

 あっちゃん、コウタはね、あれからとてもまじめになったよ。だれもなぐらなくなったし、いじわるもしなくなった。お兄ちゃんやヨシオくんとも、少しなかよしになった。

週間新潮表紙絵の谷内六郎さんの絵です

 あっちゃん、あんなに元気だったのに、人間っていつ死んじゃうかわからないんだね。コウタもそれに気づいたんだと思う。いじめた相手が、あした死んじゃうかもしれないってことにね。死んだら、その人にあやまることもできないもの。

 コウタはきっともう一生、だれにもいじわるしないよ。それからあっちゃんのことも、きっと一生わすれないと思うよ。ぼくもだよ。

 それじゃあね。あっちゃん、バイバイ。

 

 読んでくださってありがとう。3つ目の童話がすでに出来上がってます。次の童話は、小学生の男の子とそのお父さんとの、ちょっと切ない「約束」のお話です。タイトルは 『お父さんの フェニックス』

実はこれも含め、今までの童話は全て、以前、いろいろな童話賞をいただいたものばかり。皆さんがどう読んでくださるか、ブログに載せてみたのですが。どうだったのか、まだ良く分かりません。なにしろ、ブログ初心者なもので。

いま、最新のオリジナル作品を制作中ですので、そちらへのご意見をお聞かせいただきたいですね。では、また。

 

 

 

 

 

  


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